2005年07月22日

職場におけるノウハウの伝授・修得

「団塊世代」退職で企業88兆円負担減 労働経済白書(産経新聞7/22)
「団塊の退職」コスト減、企業剰余金10年で88兆に(読売新聞7/22)
新卒育成は企業の責任=人口減社会に焦点-05年労働経済白書(時事通信7/22)

 7/22に厚生労働省から、「労働経済の分析」(労働経済白書)が発表されました。概要は以下の通りだそうです。

(1) 団塊世代が2007年以降に退職していくことにより、労働力人口は2030年頃まで年0.5〜0.7%の割合で減少する。
(2) 一方で労務コストは、今後10年間で合計88兆円軽減されるものと試算される。
 →各企業はこのメリットを活用し、若年者の採用・育成や高齢者・女性の人材活用に生かすよう、前向きに取り組むべき。
(3) 定職を持たない若年者は前回調査時から微減、就学・就職の意志を持たない若年者は前回と同水準の人数。

 この件で私が感じていることを、(特に上記(1)(2)について、主に技能・技術職の視点から)以下に述べていきます。

 「団塊世代が2007年から続々と退職していく」→「その前にノウハウの継承が必要不可欠となる」ということは、はるか以前から分かっていたことのはずです。
 ところが実際には、全ての組織(企業・官公庁)がしっかりと対策をこうじてあるというわけでもないらしく、最近になって慌てているところも少なからずあるようです。
 「定期的な新規採用を行っていないため、職員の年齢構成がいびつ」「業務の外部委託を進めすぎたため、若手職員のノウハウが不足しがち」という問題を抱えている組織も少なくないでしょう。(具体的な名前は伏せますが…)

 「経営者は今まで何をしていたのか」「組合はどうして経営者の誤りを正せなかったのか」と批判するのは簡単でしょう。(私も正直、批判したい気持ちはあります)
 でも一方で、実際に「団塊世代の大量退職→人材不足・ノウハウの断絶」という危機は、すぐ目の前(あと2年後)に迫っています。今までのことを批判するよりも先に、まずは少しでも有効な対策をこうじないと話が始まりません。

 短期的な対策としては、定年退職した職員を再雇用し(数年間職場に残ってもらって)、その間に若手職員へノウハウを伝授してもらうしかないでしょう。
 中長期的な対策としては、ノウハウを修得する機会の充実(教育訓練施設の実施、業務の一部直営化)が有効でしょう。
 上記2つの理由について、(総合的になりますが)次に述べていきます。

 団塊世代あたりの職員が若かった頃は、たいていの組織では現在よりも多くの人員を抱えており、大部分の業務が直営(しかも自動化されていない)により行われていたため、作業のノウハウ(トラブル対応も含めて)を修得する機会に恵まれていたそうです。
 実際、私の職場にいる50代の職員を見ても、仕事について「通り一遍の知識」だけでなく、「周辺のこと・ウラのこと(トラブル・不必要な劣化等を未然に防ぐための対策)」まで知り尽くしているな…と感じさせられる方がたくさんいます。
 一方で現在は、どの組織でも人員削減や業務の外部委託化・自動化が進んだため、私くらいの世代の職員は、仕事の「周辺のこと・ウラのこと」はおろか、「通り一遍の知識」すら修得するのが難しいのが実情です。

 もっとも、組織の生き残りのためには経営効率化が不可欠なので、業務体制を今さら昔の通りに戻す(人員増・業務直営化・非自動化)のは非現実的でしょう。
 そこで現実的な対策となりうるのが、「教育訓練の実施、業務の一部直営化」になるのではないかと考えられます。

☆教育訓練の実施について
 多くの業務が自動化され、また、設備の品質が向上してトラブル発生頻度が低下している現状では、トラブル対応を含めたノウハウを通常業務の中だけで修得することには限界があります。そこで必要となるのが、教育訓練の実施ではないかと思われます。
 当面は団塊世代など、ベテランの職員に講師になってもらい、将来的には、ノウハウを身につけた次世代の職員が講師を引き継いでいくことが現実的でしょう。
 (朝日新聞7/18報道によれば、実際に上記のような取り組みを行うため、教育訓練施設を設置する組織もあります。
 勿論、大がかりな施設を設置すればよいというわけではありませんが、職場の現状設備だけで教育訓練が無理ならば、専用施設の設置も選択肢の一つでしょう。)

 あとは、(普段は自動・中央制御にて運用している設備を)定期的に手動・現場制御に切り替えて運用してみるなどして、機器トラブル時にも影響を最小限に抑えることができるような訓練を行うことも必要でしょう。

☆業務の一部直営化について
 特に技能・技術職においては、「現場を見て、自らの手により作業を経験すること」がノウハウ修得のために必要不可欠です。
 (技術職といえども、机上で図面とにらめっこしているだけでなく、現場で手を汚しながら作業をする経験が必要不可欠です。その経験なしには良い設計ができません。この件については、別の機会にゆっくりと述べたいと思います。)
 業務を完全に外部委託してしまえば、必然的にノウハウが低下します。(最悪の場合、委託作業の問題点を見抜けず、委託業者に適切な指導を行うこともできなくなります)
 全ての業務を直営で行うことは、経営効率の面から見て非現実的ですが、「類似する複数の業務のうち、一つだけは直営で実施し、残りは外部委託する」という方法ならばさほど無理ないでしょう。
 この方法ならば、「直営によるノウハウ修得」と「外部委託による効率化」が両立でき、委託契約の適切な設計や、委託業者への適切な指導も行えるようになります。(これは私自身、以前の仕事を通じ、身にしみて感じています)


 …と、偉そうなことを延々と述べてしまいましたが、「では、お前さんはこれまで、ノウハウ修得のための努力を完璧に行ってきたのか?」と問われれば、自信を持って「はい」とは言い切れません…(汗)…(恐らく、多くの若手職員も私と似たような状況でしょう)
 今後は受け身の姿勢ではなく、攻めの姿勢でノウハウを吸収していかねば…と自省した次第です。

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関連記事→技術職場における女性の活用(2005.10.12技術ネタ)
posted by たーしー at 18:24| 東京 🌁| Comment(2) | TrackBack(2) | 技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TBありがとうございました。

ご指摘の点、同感です。

団塊の世代が退職した後の対応はこの世代が保有する技術・知識をそっくりそのまま継承するのではなく、効率的な運営のため、要不要を見極めたり、システムを見直したりする必要があると思います。

こういった備えを行っているところと怠っているところの差が、これから出てくると思いますが、安全や品質に影響が出てくるようだと由々しき社会問題になると思います。
Posted by o_sole_mio at 2005年07月24日 23:43
o_sole_mioさん>
 トラックバックおよびコメントありがとうございます。

 "安全・品質"を確保した上での効率性向上は確かに、非常に重要ですね。
 効率性を追求するあまり、安全・品質が犠牲にされ、それが元となって発生した事故・不祥事はたくさんありますので。
 事故・不祥事により、かえって高い代償を払う羽目になった事例も少なくないことでしょう。(「安全・品質を二の次にする効率化は真の効率化とは言えない」ということだと思います。)

 安全・品質を保証するために先輩職員が築き上げてきたノウハウをしっかりと受け継ぎ、現在の状況に合わせて(同等以上の安全・品質を保持しながら)効率性を向上させるよう工夫していく…、そのような作業の繰り返しが必要なのでしょうか。(言うは易く行うは難し…)
Posted by たーしー at 2005年07月25日 20:28
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